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俺の妹がこんなに可愛いわけがない 11話 感想

京介が涙する場面はよかったなあ。可愛い妹をずっと助けてきたつもりだった兄貴なのに、この瞬間、妹の感謝の言葉に逆に救われちゃったんです。

<京介はいじけてる?>

桐乃の感謝の言葉に涙する京介。妹を助けるのは兄貴として当然のことと思って一生懸命にやってきた。別に感謝されようと思ってたわけじゃない。ただそれを認めてくれた人がいて、それが妹の桐乃だったというのはやっぱりうれしい。でも私は思うんですよね。要するに京介はいじけていたんじゃないかなと・・・。

このアニメ、最初の頃の京介の描写からは、どこかしら「いいんだ、どうせ俺なんて。」という京介の気持ちが漂っていたように思うんですよね。

例えば、「人間、普通が一番だ。凡庸、平凡、その他大勢。」のような京介の言葉は、達観しているようで実は自虐的ですよね。第1話の冒頭に出てきた京介の夢にしても、理想の妹と現実の姿のギャップがあって、それはどうせ埋まらないという感じです。何でもできて努力もする妹に対する劣等感、家族の一員として大事にされてない希薄感なんかもちょこちょこ描写されていたと思います。

<京介の心の奥底>

京介は、なにかしら自分が受け入れられてないという気持ちを心の奥底に沈めていたんだと思うなあ。だから京介にとって居心地がいいのは、田村家だったり、麻奈実だったりするんですよ。京介を無条件に受け入れてくれていますもんね。でも京介が心から居心地よくありたいと願っていたのは、やっぱり高坂家であり、桐乃だったんじゃないかと思います。

それで、京介は心の奥底に鍵をかけ、「兄貴だから仕様がないと理由をつけて妹のために一所懸命に身を投げ打って頑張る」ことに昇華したんじゃないかな。それは見返りを求めない崇高な行為に見えるけど、やっぱり代償行為であって無理してるんです。裏返すとこんなことをやってる俺を見つけてほしいって無意識に語っている。本当に京介が望んでいることは、自分の存在を受け入れてほしい、行動を認めてほしいということだったと思います。

<京介の涙のわけ>

京介は、桐乃の感謝の言葉に自分が涙する理由がわかりませんでした。心の奥底に鍵をかけた気持ちのことを忘れてしまっていたのでしょう。それくらい堅く閉ざしていたということですよね。逆にそれが異常なまでの妹への献身を生み出す力になっていたのかもしれません。

そこに桐乃の感謝の言葉は直接響いたんだと思います。桐乃してみれば、素直な気持ちを伝えただけですけど、京介の心の奥底にとっては待ち望んでいた家族の(妹の?)言葉だったんですよ。とにかく京介の閉ざされた心の鍵は開いたんです。

この瞬間、可愛い妹をずっと助けてきたつもりだった兄貴が、妹の感謝の言葉に救われちゃった。もうね、そりゃ泣きますよ。京介が本当に望んでいたことだから。

<このアニメの心理描写が面白いです>

このアニメの中の京介は、本当に一人の人間として淡々と描かれています。何が言いたいかというと、京介の心の中は、京介しかわからないんです。それと京介が認識している心の中のことはお話を観ている人にわかるけど、京介自身でも気づいていない心の中は観ている人にもわからないし、誰も解説してくれません。

他の登場人物にいたってはモノローグすらないんだな。だから心の中は行動や台詞から読み取るしかない。要するに、このアニメって、ひたすら京介目線なんですよね。京介の心の中までしっかり京介目線。こういうスタイルって、私は他に知らないかも。

そう考えると、ちょっと唐突な感じがしたAパートとBパートの桐乃の落差や、桐乃が京介に感謝の気持ちを直接伝える気になった経緯なども気にならなくなりました。このお話は京介目線の話なのでこれでもいいんですよ。桐乃のお話は、また別のところでしてくれたらよし、と私は納得しちゃいました。

次回も楽しみですね。

FX