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輪るピングドラム 23−24話 感想

圧倒的な世界観を美しい映像と音楽と言葉で紡ぎ出したすばらしい最終話だったと思います。何か根源的なものを目の当たりにして動けなくなった感じがしました。見終わって、フト周りを見回すと自分がいつもの部屋にいることに気づいて「あれ、ここはどこ。」みたいな。本当に引き込まれていましたね(笑)。

「運命の果実を一緒に食べよう」

この言葉には「人間らしさ」を感じます。もっと直接的に言えば「愛」かなあ。一方、そんなものは無いのが「生存戦略」ですよね。遺伝子が淡々と自然選択されていき、生物は単なる生存機械みたいな世界です。ただ生まれ死んで、生きた証は何も残らない。

私たちの生きている世界は、リンゴが少しずつ失われてしまって「生存戦略」の世界に近づいている気がします。まるで冠葉が消耗し、次第に人間性を失なっていったようにです。この作品で崩壊した家族や失われた子供たちの大部分が救われることもなく、社会に恨みや呪いが漂っているのはその象徴でしょう。だから眞悧のように、そんな世界は壊してしまえばいいと言う人が現れ、実際に悲しい事件は起きています。

「あなたはどうするの?」と、この作品は私たちに問うてきます。

そして提示された答えは、身近な愛する者のために精一杯に手を差し伸べることだったと思います。そうすることで愛する者は救われ、この世界にリンゴが増えると言うのです。たとえ透明な存在になったとしても、きっと愛する者はあなたのことを覚えていてくれる。生きた証は残るのだと。

そんな自己犠牲の精神って、ややもすればチープな印象になってしまうところですが、「生存戦略」との対比になっているので素直に受け止められます。たぶん誰にも否定できない人間の根源的な部分だからでしょう。とはいえ、肝心なことは私が(私たちが)それをできるかということです。結局のところ、これが一番の問題なのかもしれません。

でも難しく考えることはないのでしょう。私たちが自分以外に目を向けて気づけばいいんです。私は誰に大切にされていて、私は誰を大切にしたいのか。それがわかればきっと手を伸ばすことはできる。そんな気がしています。

輪るピングドラム」、本当に面白かったです。

FX