話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選
今年の10選は以下のとおりです。
『ガッチャマン クラウズ インサイト』第10話「seeds」
『血界戦線』第5話「震撃の血槌」
『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』第7話「空も星も越えていこう」
『冴えない彼女の育てかた』第2話「フラグの立たない彼女」
『四月は君の嘘』第16話「似たもの同士」
『のんのんびより りぴーと』第4話「てるてるぼうずを作った」
『響けユーフォニアム』第12話「わたしのユーフォニアム」
『不思議なソメラちゃん』第9話「始まってるよ!松嶋とさようなら組み換え!!」
『放課後のプレアデス』第4話「ソの夢」
『ローリング☆ガールズ』第8話「雨上がり」
番外編
『I can Friday by day!』
ルール
・2015年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。
<各話コメント>
『ガッチャマン クラウズ インサイト』
第10話 「seeds」
脚本/熊谷純、大野敏哉
絵コンテ/中村健治、木村延景、伊藤秀樹、伊藤良太
演出/小野田雄亮 作画監督/平良哲朗
節操もなく誰かの言説に同調し、調子に乗って憂さ晴らしをする。巷でも結構目にする光景です。そんな人たちを止めることができなくなっているのは、物事をちゃんと考えようせず、その場しのぎで適当にやり過ごす人たちが増えてきているからかもしれないなあと思ったり。
少々わからないことがあっても、ちょいと検索すれば何かしら答えらしきものが手に入る世の中です。近頃は、大学生のレポートとか小学生の読書感想文なんかもウェブからコピペみたいな呆れた話もあるようで、このさき考えない人たちがどんどん増えると、この10話みたいに「あれれ、なんだかおかしなことになってきたぞ…」みたいになっちゃうかもしれません(怖っ)。
『血界戦線』
第5話「震撃の血槌」
脚本/古家和尚 絵コンテ/松本理恵 演出/孫承希
作画監督/長谷部敦志、村井孝司、長野伸明(メカ)
総作画監督/杉浦幸次
軽快なアクション、小粋なセリフ、友情&ラブコメディ、色々な要素を塩梅よく織り込んだエンターテイメントなんですが、どのシーンも演出が出色の出来です。
気に入ったのは、ライブラメンバーによるピタゴラ作戦で吹っ飛ばされたモンスタートラックのシーン。クズ鉄を撒き散らしながら崩壊していく大惨事の描写は美しく、バックに流れる女性ボーカルも何だか優雅な雰囲気を醸し出してます(笑)。
ラストシーンもクール。映画を見て泣き出したホワイトを慰めようと慌てるレオ。そんなレオがふと漏らした本音に対して、「そんなことないわ、レオはいい奴よ」と今度はホワイトがそっとつぶやく。絶妙なタイミングでEDのイントロが入り、二人がくっついて赤い花が広がるズームバック。とっても洒落てます。
『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』
第7話「空も星も越えていこう」
脚本/會川昇 絵コンテ/工藤進 演出/矢野孝典
作画監督/村井孝司、三谷高史
アースちゃんは機械人形。彼女には正しいこととそうでないことがハッキリわかり、常に正しいと思うことを行って人を助けてきた。そんな彼女の規範が、ジュダズとのやり取りを重ねていくうちに少しずつ揺らぎ始めるというお話なんだけど…。
救いようのない残酷さと束の間の安堵が絶妙にブレンドされて、何とも言い難い雰囲気が背後に漂い続けてるんだなあ。自分は本当に正しいことをしているのか、心が揺らいだ時にそばで支えてくれる人がいないアースちゃん。周囲に惑わされる中、彼女が知ってしまった「嘘の味」は使い方によっては身を滅ぼしてしまう危うさがあります。
彼女は衛星軌道上で安堵の夢を見ながら眠りにつく。この先も大人たちに利用され翻弄されながら、夢の中の家族を支えにして生きていくのでしょうか……と思いきや、余韻も吹っ飛ぶまさかのCパート。一体アースちゃんに何があった?
『冴えない彼女の育てかた』
第2話「フラグの立たない彼女」
脚本/丸戸史明 絵コンテ/神戸守、亀井幹太 演出/柴田彰久
作画監督/梅津茜、瀬川真矢、荒川絵里花、広尾佳奈子、長尾祐希子
加藤さんというキャラがとても興味深いです。受け止め方によっては「ウザい」「キモい」と一蹴されるであろう安芸くんの情熱。それを淡々と受け流しつつも延々と付き合ってくれる加藤さん。オタクのみならず、何か自分の趣味を熱く語りたいだけの男の子にしてみれば、加藤さんは理想の女の子だなって思います。
最近は自分の居場所を確保するのにも、いろいろと求められることが多すぎますよね。それにちょっとでも対応できないと何か自分は駄目な人みたいに思えてきて、もう面倒くさいから一人でいいやって気持ちになっちゃう(笑)。
でも一人って寂しい時もある。そんな時、可愛いけど目立たない、誘えば来てくれる、自分の喋りたいことだけを喋っていてもずっと付き合ってくれて、見返りを求めてこない、そういう加藤さんみたいな女の子がそばにいてくれたら…。
このお一人様ご用達の面倒くさくないヒロイン、今の時代に出るべくして出てきたんじゃないでしょうか。
『四月は君の嘘』
第16話「似たもの同士」
脚本/吉岡たかを 絵コンテ/黒木美幸 演出/黒木美幸
作画監督/ヤマダシンヤ、野々下いおり、小泉初栄、三木俊明、浅賀和行
総作画監督/高野綾
この年頃の女の子しか持つことができない感性をぎゅうっと詰め込んだ感じの凪ちゃんが実に魅力的です。耽美で神秘的とも言える内面を過度な表現にせず、普通の女子中学生のものとして、このアニメらしく描いているのがいいなあ。
兄に恋慕の情を抱き、公生を叩き潰してやろうと思っている。崇高な犠牲、見返りを求めない愛情、そんなことを呟きながら自らをファントムに擬える女の子。そんな彼女が、公生にも好きな人がいて、ちょっとだけ自分の境遇と似ているところがあることを知ります。なんとなく心を通わせ、ピアノを弾く理由も重なって、彼女の心は少しだけ動く。そして…
な〜んと今まで公生の指を鍵盤の蓋で押しつぶす妄想をしていた彼女が、一転して公生の袖口にキスマークつけて鬱憤を晴らしちゃう。うーん、この機微をうがった描写には思わず悶えました!!
『のんのんびより りぴーと』
第4話「てるてるぼうずを作った」
脚本/吉田玲子 絵コンテ/川面真也 演出/福多潤
作画監督/冨田康弘、北川和樹、塚本歩、吉田和香子
総作画監督/大塚舞、井本由紀
Aパートは笑ったなあ。自らてるてる坊主になってしまうれんげの発想の豊かさと怖いものはちょっと苦手な小鞠の幼い一面が織りなす妖怪騒動。玄関口でお面をつけたかず姉と鉢合わせた小鞠は白目をむいて声も出せず、その間15秒ほどストリングスが響いていただけだったのも、彼女の驚きっぷりが伺えて面白かったです。
一方、Bパートは余韻が心地いい。ひらたいらさん(カブトエビ)が死んで、新たなひらたいらさんが生まれた。れんげはそのことに素直に感動する。その姿に私も感動する。そして田舎の自然や風景のカットが続いた後にED。命は受け継がれていくものなんだなぁなんて、余韻に浸ってると何だか田舎に行ってみたくなります。
どこかにファンタジーな田舎を満喫できる観光地ってないかしら(笑)。
脚本/花田十輝 絵コンテ/三好一郎 演出/三好一郎
作画監督/丸木宣明
日和見な感じだった久美子が少しずつ変わっていき、ラス前にしてついに感情を露わにさせました。162小節目からのパートを外されて、悔しくて泣いて、お姉ちゃんに八つ当たりして、そうして彼女は自分の中にあったひとつの答えにたどり着きます。
彼女が見つけた答えは「ユーフォが好きだ」ということ。そして曖昧にしか思い描けない将来のために、その気持ちを手放す必要なんてないんだと気づく。すごいよ。こんな風に自分の中にある大切なものを掘り起こすことができるのって。たぶん運命の神様はそんな人に向かってウインクをするんだと思うなあ。
この作品には好きな回がたくさんあるけど、この回を見るとなんだか自分を見つめ直したくなるんですよね。そんな気持ちにさせられるお話、そう多くありません。
『不思議なソメラちゃん』
第9話「始まってるよ!松嶋とさようなら組み換え!!」
脚本・絵コンテ・演出・作画監督/いまざきいつき
遺伝子組み換えの松嶋が森に放たれ、次第に野生化し凶暴化していく。村にも被害が及ぶようになり、政府は正体不明の生物(彼女)を銃殺することに。ソメラちゃんたちは彼女を救出するため現地に向かった…。
普段は私の想像の斜め上を行く不条理ギャグを連発しているソメラちゃん達が、真面目に事態の収拾を図ろうとする異色回。そのギャップ感に見事に嵌められてしまった私です。なんかいい話みたいに終わっちゃったけどいいのか、おーい(笑)。
『放課後のプレアデス』
第4話「ソの夢」
脚本/浦畑達彦、森悠、佐伯昭志
絵コンテ/春藤佳奈、佐伯昭志 演出/吉田徹
作画監督/西村真理子
最初はあまり注目していなかったんですが、見ているうちに丁寧な設定と堅実な作りに惹かれてどんどん好きになっていった作品です。ドライブシャフトの作動音が車のエンジン音みたいだったり、物理法則や星の知識が随所に散りばめられているのも楽しい。
家のホワイトボードの行き先に「月!」と書いたひかる。それを信じて、月にいるはずの娘にピアノの演奏を届けようとする両親。そんなファンタジーを繊細なひかるの心模様を絡めて描いた良回だったと思います。ひかるの夢の中に流れていた音楽が、鈴木さえこ風だったのも個人的にグッドでした。
『ローリング☆ガールズ』
第8話「雨上がり」
脚本/むとうやすゆき 絵コンテ/平川哲生、江原康之
演出/浅見松雄、金森陽子
作画監督/九高司郎、横田匡史、小沢円、世良コータ、本村晃一
総作画監督/北田勝彦
ライブシーンが圧巻です。飛びまくる観音様ミサイルを清水寺が迎撃(笑)。ド派手で罰当たりな空中戦が夜空を彩る中、美沙、半ちゃん、マー坊が「STONES」を熱演。間奏から参戦してきた豆千代ちゃんの三味線がメチャかっこいい!
この作品って、大人が次世代を担う若者を粘り強く見守り、時に叱咤激励したり、時にサポートすることで、若者が勇気百倍になって素晴らしい力を発揮する姿を一貫して描き続けていましたよね。だからこそ勢いがあるし、型に嵌らない面白さが生まれていたと思います。
番外編『I can Friday by day!』
もしもTVアニメという縛りがなかったら、10選に加えていたと思うのがこの作品です。「日本アニメ(ーター)見本市」で発表された作品のひとつなんですが、これは本当にいいと思いました。
6分弱のアニメーションなので詳しくは書きませんが、絵柄はフラットな感じで今風だけど見やすく仕上げてあるし、この年頃の女の子の脳内で繰り広げられていそうなえげつなさを独特な世界観と設定でうまく表現していて感心させられました。『フリクリ』が好きな方はラストにも注目です。
今年もいいお話が多すぎて選考が大変でした。
それでは皆様よいお年をお迎えください。