閃光のナイトレイド 5話 感想
タイトルどおりの構成で、葛と愛玲というフィルムを通して、西尾を印画紙に写しだしたようなお話でした。葛と愛玲の会話に西尾というスパイの思いを馳せ、やるせないラストの余韻にひたる、な~んていう雰囲気はけっこう好みです。
一枚の集合写真から始まった話は、ドラマチックであり味わい深くもある良質な短編映画を観ているようでした。このアニメは何かひとつでもとっかかりをつかめたら、それを起点にして視野が広がっていって、途端に面白くなる気がします。
私は最初にこのお話を観た時、やっぱり坦々とした印象であまり面白いと思わなかったんですけど、最後の方で愛玲が窓辺に腰掛けて煙草に火をつけるところからの場面にちょっとした映像的快感を感じてました。アングルとカメラが引いて行く感じと音楽が心地よかったんだと思います。それで、その場面をもう一回観てみたんですよ。
窓辺に腰掛けて煙草に火をつける愛玲。近くの建物の影に男がひとり立っている。すぐには誰なのかわかりませんでしたが、ふと西尾だと思いました。その瞬間、私は胸がカッと熱くなるのを感じました。彼はここに来た、そういう男だったんだと。
彼は愛玲に声をかけることもなく去っていきました。ここにくれば国民党に居場所を知られる可能性は高い。果たして彼は暗殺されてしまいます。こうなると一回目に観た印象とは全く違ってきて、葛と西尾の会話、愛玲と西尾のそれぞれの想いが胸に迫ってきます。
ところがフッと気づきました。窓辺に腰掛けて煙草に火をつける愛玲。近くの建物の影に男がひとり立っている。この髪型はもしや葛ではないか? そうか、やっぱり西尾は来なかった。葛はあの夜に告げた一言で西尾はもしかしたら来るかもしれないと、それを確かめに来ていたんでしょう。それにしても葛はなぜこんなにも西尾を追い続けるのか?
葛は、日本人である西尾がなぜ異国のスパイになり、異国のために活動するのか知りたかったのかもしれませんね。4話での日本軍を見た時の葵との会話はある意味伏線だったのかなあと思ったりします。西尾のスパイとしての姿は、葛に何かを残すことになったのではないでしょうか。
ところで、西尾に関わり続けようとする葛を見かねて、葵が忠告しています。桜井機関のメンバーから見ても目につく行動だったのかも知れません。その行動は国民党も見ているはず。このまま放置できないと考えると、もしかしたら西尾の始末は、桜井の指示によるものかもしれません。桜井なら1話で、そうとも思えることをやってますからね。
そう考えると、屋上での桜井のしゃべりがなんとも味わい深くなってきます。葛に対してよしよしと口では言っているけれど、かなり怒っていたのでしょう。ひとしきりしゃべって、頭に血が上ったのかもしれません。たしかに、ひと雨欲しいとこかも(笑)。
結局、西尾の運命は、葛によって揺らいでしまったことになりますよね。過去に関わった人たちを置き去りにして前を向いて走り続けていた西尾でしたが、関わった者の心をとらえて離さない強烈な印象を残す男だったゆえに起きた、運命のいたずらだったようにも思います。
次回も本当に楽しみです。