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それでも町は廻っている 九番地 感想

シーサイドでの歩鳥とタッツンとの短い会話。お互いの気遣いや思いが垣間見えて面白い。タッツンの想いを改めて考えると切ない気持ちになってしまうけど、最後のオチがしっかり笑わせてくれます。

<歩鳥の敏感と鈍感>

歩鳥は軽い気持ちで卓球の試合に負けたタッツンを慰めようと、跳箱をうまく跳べなかったけど自分の将来に跳箱の技術は必要ないとタッツンに話を始めます。これって、試合に負けても大したことじゃないという慰めの言葉でもあり、跳箱の技術は必要ないということへのツッコミを期待した言葉なんですよね。

ところが、タッツンから反応もツッコミもないんです。

それを見逃さない歩鳥。ちゃんと相手の様子を見ながら話をする子ですよね。自分の予想以上にタッツンは落ち込んでいると思ったんでしょう。小さく咳払いして、慰めの言葉を続けます。

「タッツンも、ほら、真田のお嫁さんになるのに、卓球は関係ないでしょ。」

歩鳥にしてみれば、タッツンの興味を引くつもりで何となく真田を引き合いに出したんでしょう。でもこれ、タッツンにはカチーンときました。

<タッツンの歩鳥に対する気持ち>

なぜならタッツンは真田のことが好き。しかも真田が歩鳥に好意を持っていて、歩鳥がそれに全く気づいていないことにも感づいています。タッツンにとって、歩鳥は恋のライバルだし、自分は不利な立場にいるのも自覚しているんです。

そんな歩鳥から「真田のお嫁さん・・・」と無邪気に言われたら、馬鹿にされてると思えてしまうも当然ですよね。そこでタッツンはつい口走ってしまうんですよ。歩鳥の言葉は慰めとわかっているのに、秘めていた心が出てしまうんです。

「あんた、さっきから私のこと馬鹿にしてるの?、慰めてるの?」

タッツンは、顔に出ていないけど内心しまったと思ったに違いありません。真田についての歩鳥に対する自分の気持ちは悟られてはいけないことであり、大切な友達である歩鳥に、今言う必要もないことなんです。

そこでタッツン、何食わぬ顔で卓球の話を続けるんです。それをさらりとやってのける。そんな彼女は本当に器用です。でもちょっと見てて辛いですよね。

<特出できないタッツン>

タッツンは言います。自分は昔から器用貧乏で、バイオリンでも卓球でもある程度のレベルまでは努力しなくても到達するけど、そこで止まっちゃって天才と努力家に追い抜かれてしまうと・・・。

「特出できない運命なんだよ。」「笑うがいいよ。」

タッツンが卓球部に入るのを止めてシーサイドでバイトすることに決めたのは、真田に会えるからなんですよね。真田のことが好きなんです。でもタッツンは、真田にとって特出した存在ではないんですよ。ここでもまた同じ思いをしてる。

しかも真田にとって特出している歩鳥が自分の目の前に座っているんです。そんな気持ちを裏に秘めた言葉なんですよね。

<真田はやっぱりエロ章でした>

ここで終わるとちょっと重い感じになってしまいますが、そうしないのがこのお話のいいところかも。卓球の試合中にやたらと大きく揺れていたタッツンの天賦の胸は、このオチのためにありました。

「焼きつけよう、揺れる思い出を胸に」

タッツンの天賦の胸は、真田の脳裏にしっかりと焼き付いていました。真田エロ章にとって、ある意味タッツンは特出した存在になったんですよ。高校生男子なんて所詮こんなもんですね。これこそ健康、健全、そりゃ結構の3Kだ。

タッツン、あの試合は無駄じゃなかった。自信もっていいんだよー(笑)。

次回も本当に楽しみです。

FX