それでも町は廻っている 十番地 感想
「それでも町は廻っている」というタイトルの懐深さを感じました。非日常を違和感なく取り込んでいる町。不思議な余韻が残るお話でとても面白かったです。
<今度は黒いのきたーぁぁっ>
ずんずんダンダダ、ダダダッだんっ、チャ〜ララ〜、ラ〜ラ〜ラ〜ら〜ぁん♪
このフレーズが耳に残って離れません(笑)。次々と荒唐無稽な状況が歩鳥に襲いかかる。歩鳥の反応がとっ散らかっていて笑えます。
こんなことがあれば翌日も精神的に引きずりますよね。様々な感情が渦巻いてかなり情緒不安定な歩鳥ですが、「私、丸く削った咎で縛に就くんですかねぇ。」なんて言い回しがさらっと出てくるから笑っちゃう。紺先輩が持っている小物が昨晩の光線銃と質感が似ていると言って怯える姿もいちいち可愛らしいんだな。
でも、歩鳥だったら好きそうな出来事じゃないかと思ったのにこの反応です。それがいかにも当事者っぽくってちょっとリアルな雰囲気を醸し出してます。
それと丸く削られた場所が痕跡を残さず修復されてしまうというのもお話としてはうまい。結局、私たちは気づいていないけど、身近なところで何か想像を超えたことが起きていても不思議じゃないってことですよね。
そう考えるとラストの歩鳥と紺先輩はどうなってしまうのか?。きっと非日常な痕跡は何らかの形ですべて消し去られてしまいそうな気がします。
<10年以上ふわふわ彷徨ってるんだ、すげえだろ>
このじいさん、浮遊霊だったんですね。しかもウキばあさんの亭主だったとは。今のシーサイドができた経緯なんかがほのめかされたり、何だかパズルのピースが嵌まっていく感じが心地よいです。
しかし、浮遊霊歴10年以上のツッコミ人生は伊達じゃない。まるでウキばあさんがじいさん相手にボケているかのようなツッコミが笑えます。ずっと一人で誰にも気づいてもらえないのは寂しいだろうに、「ここは話し相手に事欠かねえなあ。」って台詞が出てくるのは、じいさんが粋なのか、この町が懐深いのか。
ところで、私はお風呂で頭を洗っている時にちょっと背後が気になったりすることがあるんですが、それってじいさんみたいなヤツがいて、何か私にツッコミを入れてるってことなんでしょうかね?(笑)。
次回も本当に楽しみです。