魔法少女まどか☆マギカ 11−12話 感想
「さあ、叶えてよ、インキュベーター!」その揺るぎない言葉にまどかの決意が感じとれます。かつては願い事がケーキになりかけたこともある彼女だったけど、自分が導きだして納得した願いは力強い。そして、その願いは叶えられて宇宙をも再編してしまいました。まさに今、この時代に魔法少女のお話を作ったらこうなるというのをよい意味で見せてもらった気がしています。
このアニメって、お話自体は特に目新しさは感じられなかったんですよね。むしろ私が接してきたいくつかのアニメを焼き直して見せてくれていたと思うんです。ただちょっと違うのは、かつてのアニメだったらツッコんじゃいけないところをあえて視聴者に見せ、きちんと説明していたところです。それがまず斬新で面白かったんじゃないかな。
例えば、魔法少女も社会の一員です。きちんとマミさんは行方不明になるし、さやかは死体で発見される。魔法少女の世界で起こったことが私たちが営む世界で具現化すれば当然そうなっちゃいます。
それから、主人公が誰かのために身を抛とうとするとき、それを悲しむ人がいることを忘れていない。まどかには家族がいる。お母さんとのやり取りをきちんと示して、それからまどかは魔法少女になるんです。
魔法少女になるのだって、ある日突然誰かがやってきて魔力を授けてくれるわけじゃない。宇宙人と契約してなるんです。しかもリスクと対価を前面に押し出した設定はいかにも現代的な感じがします。
さらにこのアニメでは、かつて魔法が持ち合わせていた不思議さ(悪く言えばご都合主義的な面)でさえも説明しようとします。まどかの願いが叶うときに起こるのは、あら不思議などといういいかげんなものではなく、いちおう宇宙の再編にまで及ぶ物理現象なんです。
まさに現代の御伽噺だし魔法少女のお話ですよね。ただこれだけなら私はこのアニメを好きにならなかったでしょう。この手のお話はパロディとかお笑いになりがちだと思うんですけど、このアニメはそうしなかったところに真摯さを感じます。かつてのアニメを揶揄することなく、きちんとリスペクトして作っているんだと思います。しっかりと成長や友情が描かれているし、映像もスタイリッシュで音楽もすばらしい。
そして何よりも「魔法少女まどか☆マギカ」が放つメッセージが心に響きます。閉塞感が漂う今の時代に「私たちがやってきたことは無駄じゃない。最後まで自分を信じていいんだ。」という気持ちを持たせてくれる。最初からの散々な鬱展開もこの最終話のためにあったと思えば良しです。
ただ、まどかの結末についてはいろいろな受け止め方があるかもしれませんね。でもこれも良しだなあ。彼女は夢を叶え、魔法少女に希望を与え続ける「生き方」を選んだんですよね。それはもちろんヤサシくない「生き方」ではあるけれど、私たちだってこんな「生き方」をしなければならなかったり望んですることがあるはずです。そうやって社会は成り立っているのだから。
「魔法少女まどか☆マギカ」は、今の時代に世に出たゆえ輝きが増している面があるかもしれません。でもそれを差し引いたとしても、このアニメは十分に力強さを持ち合わせていて、しばらくは色あせない作品として残っていきそうな気がします。本当にすばらしかったです(拍手)。