へうげもの 9話 感想
このアニメのサブタイトルは、元ネタが想像できるので毎回楽しみにしています。9話の「非情のライセンス」ですぐに思い浮かんだのは、ずいぶん昔のテレビドラマ「キイハンター」ですね。当時、私は子供でしたから番組自体を見たことはないのですが、そのテーマ曲「非情のライセンス」の旋律は今でも口ずさめてしまうから、かなりの人気番組だったと思います。
ところが、今回のお話の「非情のライセンス」はそれだけじゃなかった。明智光秀が月を見上げながら信長を討つべく京へ兵を進める時に流れた歌が、これまた聞き覚えのある気がする。こちらはどうにも思い出せず、気になって調べてみたら、やっぱり昔のテレビドラマで『非情のライセンス』のエンディング歌でした。
この歌がなんとも渋くていいんだなあ。さらに伴奏なしの独唱というのが歌詞を際立たせて、光秀の心境を表現するのにピッタリの演出です。でもこの場面をいいと感じるのはきっと私が年をとったからかもしれませんね。若い頃の私だったら辛気くさいと笑っていたんじゃないかと思います。
8話の感想では、光秀の茶席でのやり取りが面白いと書きましたが、それは型にはまっていたからです。そんな光秀が型破りなことを成そうとしている。でもその姿は何が何でもというよりは、老兵が死に方を決めただけの悲哀の方が強く漂っていますよね。この場面に共感できる人かできない人かって、実は若さとか生き方のバロメータになりそうな気がします。さて、あなたはどちら?(笑)。
ところで光秀は自ら「鬼となる」と言ったけど、本当に鬼と化していたのは秀吉でした。その姿には何が何でも事を成し、自らは生き延びてみせるという力強さを感じます。さらに光秀が京に兵を進めたのを偵察に確認させた上で事に及んだ節もあり最後まで実に周到です。そして信長をためらいもなく切った秀吉の非情さを目の当たりにすると、野心はこうまで人を変えてしまうのかと思うのです。
ラストは圧巻でした。蛙の鳴き声に目を覚ました信長、香炉の蛙、一瞬の決着。劇画的な描写が実にきまっています。「へうげもの」本能寺はまさかの衝撃的な展開を見せてくれました。信長を切った秀吉、事が成った後に到着することとなった光秀。まさしくクライマックスです。
次回も見逃せません。