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それでも町は廻っている 三番地 感想

鮮やかな推理を披露する歩鳥と迷宮から抜け出せない歩鳥の姿が何とも対照的でした。登場人物の味わいも増してきて、今回のお話も面白かったです。

<微笑ましい歩鳥がいい>

歩鳥の自画像の謎解きは、森秋先生らしい過不足ない背景の説明があり、辰野さんとウキばあさんの推理が参考になってはいるんですが、やっぱり歩鳥の閃きが決め手ですよね。だてに推理小説好きなわけじゃありません。

そして自分の考えを森秋先生に説明するのに、いろいろ準備してるんですよね。自分も周囲の人にも楽しんでもらおうとするのが歩鳥らしい。トランプ、カステラ、そしてあの自画像を使ってサイコロまで作っちゃって。しかもそのサイコロに風呂敷を被せて隅っこに置いてるんです。ここぞ、というところで出すつもりだったんですね。何とも微笑ましいじゃないですか。

そんな歩鳥のサービス精神は、恋する乙女力なのか、単なる性分から生まれたものなのかわかりません。ただ残念ながら森秋先生には少しまどろこしかったみたいですね。ちょっと調子に乗りすぎたし。でも先生の期待には見事応えた歩鳥なのでした。この二人、当面はこんな感じのままなんでしょうか?(笑)。

<律儀な森秋先生がいい>

現役の教え子にお礼の手紙をしたためる森秋先生が素晴らしい。歩鳥の推理が正しかったかをきちんと確認して、その結果を報告するのは依頼者として当然のことなんです。でもこういうことって、自分でわかっているつもりでも案外できていなかったりするものですよね。それを手紙でっていうのも渋い。

さらに、6枚の遺品の自画像を集めてサイコロを復元し、お礼にと歩鳥にプレゼントする律儀さもいいんだなあ。それにサイコロは遺品でちょっと気味が悪いというオチまでついちゃう。なんだか単なる堅物じゃない愛すべき姿が見えてきて、先生のことが好きになりました(笑)。

<最初の入り口を間違えると抜け出すのは案外難しい>

「はあーん、この声変わりしていないっぷりから察するに、十二、三歳の小僧だね。まあこんな歳で金髪とはグレちゃってもう〜。」

最初の思い込みが間違っていると、それを修正するのはなかなか容易にできないもんなんですよね。歩鳥は紺先輩のことをすっかり年下男子を思い込み、最後には幽霊とまで勘違いするというか信じ込んでしまう有様で笑ってしまったけど、自画像の謎解きの鮮やかさとはあまりに対照的でした。

最初は間口を広く取って事実関係を整理し、初動捜査に抜けがないようにしないと迷宮入りして抜け出せないことがありますよね。こういうのって結構自分でも気づかずに陥ってるかもしれないので、気をつけなきゃいけない。何だか教訓めいた?エピソードだと感じてしまいましたとさ(笑)。

<おおらかだけどきちんとつっこむ紺先輩がいい>

「がきんちょ」な歩鳥に対して、目線を合わせてツッコんだりすかしたりできる紺先輩がいいですね。辰野さんは歩鳥に対して少し上から目線なので、紺先輩と歩鳥の掛け合いはまた違った味わいがあります。

猫のしっぽがないと慌てる歩鳥を見て、ノアの方舟の逸話をしてあげる紺先輩。歩鳥のことを単純にアホ扱いしないところがいいんですよ。当の歩鳥は、せっかくのノアの方舟の逸話を身も蓋もなく否定しちゃう無神経さですが、それを軽く受け流して、「ほんじゃ、一応ありがとね。」と言えるおおらかさも素敵です。

まあ、紺先輩は歩鳥のことを面白いヤツって思っているんでしょうね。最後の場面で「気にすんなって、な、お姉ちゃん!」と歩鳥の肩を叩いているし、今後も楽しい掛け合いが見られそう。

いやー、次回も本当に楽しみです。

FX