高橋葉介「夜姫さま」~ くりかえしの物語
昨日の夜は秋の夜長という感じだったからか、なんとなく高橋葉介の「夜姫さま」が読みたくなりました。この人の作品って、何回読んでも感動や余韻が薄れていくことがない。普遍的なテーマ、切れ味や余韻が心地よい展開、そして絶対的に美しい絵、それらが見事に調和したヨウスケ・ワールドには、何年たっても色あせない力強さがあると思ったりします。
高橋葉介の作品には「入れ替わり」や「生まれ変わり」といった「くりかえし」がよくでてきますよね。作品の登場人物たちは、因果応報的に、はたまた理不尽に、その「くりかえし」の世界へ引きずり込まれ、抜け出せなくなっていくことが多いのです。そして彼らは、その境遇をどうあろうと最後には受け入れざるえない。それは、諦念なのか、覚悟なのか、その微妙な感じが絶妙な余韻を産み出している気がします。
「夜姫さま」は、お姫様をテーマにした連作です。十人のお姫さまが登場しますが、私が一番気に入ったのは「泥姫さま」かな。ちょっとしたアイデアを作者お得意の「サイレント」と「くりかえしの物語」にさらりと纏め上げて、最後にひと味つけたって感じでしょうか。品のよい仕上がりになっていると思います。
高橋葉介「夜姫さま」、興味のある方はぜひ味わってみてください。