今回のお話って、ものすごくリアルな感じがします。もちろん和奏と全く同じ経験をしたわけではないけれど、似たような思いは誰だってしたことがあるんじゃないかな。
悔恨の情は心の中に宿るので、ピアノみたいに目に見えないところに片付けちゃうことなんてできません。自分の中で気持ちの整理をつけていくしかないんですよね。そのためには、和奏はあることに気づかなければいけないと思うのです。それは、お母さんにとって、自分だけが特別な存在じゃないってことです。
和奏にしてみれば、まだお母さんはお母さんでしかないのでしょう。自分はお母さんにとって特別な存在だと思ってる。もちろんその通りなのですが、お母さんから見れば、夫も、合唱部の同級生も、後輩たちも、音楽仲間も、みんな特別で大切な人たちなはずです。
和奏とお父さんとの食卓での会話が象徴的でした。ちょっと大人を気取った言い回しでピアノを片付けたいと切り出した和奏と、少し戸惑った表情を見せるお父さん。ピアノは、和奏にとってはお母さんの思い出ですが、お父さんにとっては妻の思い出でもあるでしょう。
ところが和奏の提案って、そんなことはお構いなしになってる。お母さんにとって自分だけが特別な存在だと考えているからですよね。「もう子供じゃないんだから。」なんて言ってますが、まだまだ和奏は子供です。
一方で、そんな和奏と接する大人たちは、お母さんがどんな人だったかをいろいろと伝えようとします。校長先生も、コンドルクイーンズのおっさん達も、紗羽のお母さんも。それぞれの人たちにとって、和奏のお母さんは特別だったし、その逆も然りだった。
和奏は、それに気づくでしょうか。お母さんをお母さんとしてだけではなく、「まひる」という人物として見ることができた時、彼女は変わるんじゃないかなあ。「まひる」が何を思い、あの手紙は何を言わんとしてるのか。そして自分は何をすべきか、きっとわかってくると思うのです。
次回も楽しみです。