今年の10選は以下のとおりです。
『宇宙パトロールルル子』第3話「SEASON 1 EP.FINAL」
『終末のイゼッタ』第1話「たたかいのはじまり。」
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』第20話「山岸由花子はシンデレラに憧れる」
『夏目友人帳 伍』第11話「儚き者へ」
『響け!ユーフォニアム2』第10話「ほうかごオブリガート」
『舟を編む』第7話「信頼」
『ふらいんぐうぃっち』第2話「魔女への訪問者」
『フリップフラッパーズ』第1話「ピュアインプット」
『無彩限のファントム・ワールド』第4話「模造家族」
『ルパン三世』第20話「もう一度、君の歌声」
ルール
・2016年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。
<各話コメント>
『宇宙パトロールルル子』
第3話 「SEASON 1 EP.FINAL」
脚本/雨宮哲 絵コンテ/大嶋博之
演出/赤城博昭 作画監督/本田敬一
新谷真弓さんの魅力が炸裂してます。ミドリのいい加減で大雑把な(でもけっこう真面目っていうか常識的だったりする)キャラにドンピシャというか、まんま『フリクリ』のハルコじゃん(笑)。
この3話は、ルル子とミドリのバトル、ルル子の淡い恋心、ラストの余韻、そしてCパートでミドリが宇宙パトロールに入隊!?といった展開が10分間の中にテンポよく織り込まれていて、最高に楽しめます。
『終末のイゼッタ』
第1話「たたかいのはじまり。」
脚本/吉野弘幸 絵コンテ/藤森雅也 演出/根岸宏樹
作画監督/山下祐、西岡夕樹、ジャカルタ・カルカッタ軽田
イゼッタとフィーネが再会するお話なのですが、フィーネがとっても魅力的です。公国の姫君としての気品、気構えを備え、美しいけどはねっかえりな面もある。それが列車や飛行機でのアクション、ブリタニア外相との会談などを通して丁寧に描かれていきます。早見沙織さんの演技もすばらしい。
冒頭の列車アクションは特に気に入っています。追い詰められたフィーネたちがトンネルを抜けた列車から飛び降りるまでのシーンは、光の使い方、スローモーション、劇伴、SEがカッコよくて、とても惹きつけられました。
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』
第20話「山岸由花子はシンデレラに憧れる」
脚本/ヤスカワショウゴ 絵コンテ/藤本ジ朗、津田尚克 演出/藤本ジ朗
作画監督/Cha Myoung Jun 総作画監督/西位輝実
能登麻美子、大原さやか、両ベテランの競演。由花子の傍若無人っぷり、辻彩の現実主義的な性格の魔女。二人ともお手の物って感じで見事に演じていて感心させられます。止め絵も女性キャラならではの華やかさがありますね。
口紅を塗るのを忘れて容姿が崩れてしまった由花子が、康一くんの男気溢れる決断と辻彩の魔女としての矜恃に救われるお話。古典である『シンデレラ』を『ジョジョ』がリメイクしたら、女の身勝手、男の優しさ、魔女の沽券といった人情話になるんだなぁ(笑)。
『夏目友人帳 伍』
第11話「儚き者へ」
脚本/村井さだゆき 絵コンテ/伊藤秀樹 演出/伊藤秀樹
作画監督/本橋秀之、青野厚司、池田早香
このアニメもとうとう5期目に突入ですね。今期は好みのお話が多くて選出に悩んだけれど、この11話を選びました。ただ貴志が風邪を引いて、それが治ったというストーリーなのに、どうしてこう味わい深い話になるのか。
人付き合いの煩わしさや厄介な問題を避けながら生きていくのもありだけど、周囲との関わりをもう少しだけ大事にして余計なことを背負い込んだり大変な目に会いながら生きていく方がずっといい。確かにそうかなぁって気になります。
『響け!ユーフォニアム2』
第10話「ほうかごオブリガート」
脚本/花田十輝 絵コンテ/山村卓也 演出/山村卓也
作画監督/池田和美
ガスコンロにボッと火がついて、久美子があすかに自分の思いをぶつけるシーンが印象的です。この黒沢ともよさんの熱演は本当に素晴らしくって、この作品の中でも屈指の名シーン、名演技だと思うのです。
自分の中から掘り起こした大切なものを簡単になかったことにしないでほしい。後悔するとわかっている選択肢を自ら選ばないでほしい。明確な将来を思い描くことが難しい今の時代を生きる若者へのストレートなメッセージであり、エールだと思います。
『舟を編む』
第7話「信頼」
脚本/木戸雄一郎 絵コンテ/黒柳トシマサ 演出/光田史亮
作画監督/松下郁子、郷津春奈、神谷友美、中谷亜沙美
総作画監督/青山浩行
息の詰まるような小田先生との駆け引きを制した後、西岡が会いたくなったのは三好さんでした。彼にとって、いつの間にか彼女はそういう女性になっていったんですね。この時の二人の携帯メールのやり取りがいいんだなあ。
三好さんが最後に送信したメールの文章は、普段彼女が使っている文体とは明らかに違っています。付き合っていることをオープンにしても構わないと言ってくれたことが嬉しかったのでしょう。まるでプロポーズに対する返事のようなしおらしさが感じられ、まさにこの作品ならではの表現だと思うのです。
『ふらいんぐうぃっち』
第2話「魔女への訪問者」
脚本/赤尾でこ 絵コンテ/二瓶勇一 演出/高島大輔
作画監督/中西愛、吉田優子、森七奈 総作画監督/安野将人 藤井昌宏
この作品、初めて見たときはあまりにも何も起こらないのでイマイチ波長が合わないかったんですよね。ところが見ているうちにだんだん波長が合ってきて、今年の冬アニメになくてはならない作品になっちゃいました(笑)。
春の運び屋さんにビビる千夏ちゃん。自分の嫌いなバッケを真琴が食べるのか、わざわざ確かめに来て「まこ姉も大人だったか…」と呟く千夏ちゃん。とにかく千夏ちゃんが可愛くていい子なんですよね。その観点でこの2話を選びました(あ、誤解しないで、違いますから!)。
『フリップフラッパーズ 』
第1話「ピュアインプット」
脚本/綾奈ゆにこ 絵コンテ/押山清高 演出/押山清高
作画監督/小島崇史
快感の即効性が抜群に高い。何回も繰り返し見てしまう中毒性も強力でヤバい。この不思議な世界を一度体験したら、簡単には戻っては来られません。たとえ抜け出せたとしてもすぐにまた行きたくなっちゃう。いや、ホントです。
アバンから心を鷲掴みされました。キャラデザ、パピカが飛び出すシーンの映像や劇伴、OP、地獄少女っぽい小舟、おばあちゃん、キュッとスカートの裾を引っ張る仕草、登校時の街並み、踏切での出会い…もうキリがありません(笑)。
『無彩限のファントム・ワールド』
第4話「模造家族」
脚本/志茂文彦 絵コンテ/石立太一 演出/石立太一
作画監督/植野千世子
現実の世界で直面している問題を受け止めきれなくなった玲奈の心が呼び寄せたファントム(模造家族)。それに玲奈が取り込まれそうになります。最後はいい話っぽくまとめているけれど、よーく考えると怖い話ですよね。
この作品、1話のリンボーダンス、2話のバスタオル、3話のチャイナドレスといった感じで来てたので、この4話も期待していたら意表を突かれました(笑)。玲奈の理想の家族像の反映が、極端にコミカルでメルヘンチックなのも面白いです。
『ルパン三世』
第20話「もう一度、君の歌声」
脚本/吉田恵里香 絵コンテ/川口敬一郎 演出/前島健一
作画監督/湖川友謙 総作画監督/末永宏
ルパンは車を運転しているだけという異色回。かつて一世を風靡した歌手ノラが半世紀近く愛用した車をルパンが盗み出す。車を巡る様々な周囲の思惑。年老いたノラと夫マーティンの思い出。ルパンが運転する車が向かった先は……!?
このお話、まるで良質な昔の映画を見ているようで好きなのです。ルパンらしいアッと驚く仕掛けもアクションもお色気もなし。でも盗んだ車をノラたちの思い出の場所に置いてきちゃうなんてのは彼にしかできない芸当で、地味ながらもきちんとルパンのお話にもなってるのがすばらしい。
今年も本当にいいお話が多すぎて選考が大変でした。
それでは皆様よいお年をお迎えください。