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深夜アニメ、音楽、映画、コミックの感想など

話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選

今年の10選は以下のとおりです。

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』第12話「乙女心のいろいろは」
鬼滅の刃』第19話「ヒノカミ」
ゲゲゲの鬼太郎』第39話「雪女純白恋愛白書」
『荒野のコトブキ飛行隊』第6話「帰らざる無宿」
『PSYCHO-PASS3』第7話「Don't take God's name in vain」
『女子高生の無駄づかい』第6話「まじょ」
ジョジョの奇妙な冒険-黄金の風-』第27話「キング・クリムゾン vs メタリカ
『Dr. STONE』第12話「背中合わせの仲間たち」
ハイスコアガールII』第24話「ROUND24」
『モブサイコ100II』第7話「追い込み〜正体〜」

ルール
・2019年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。

 

<各話コメント>

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』
 第12話 「乙女心のいろいろは」

監督/安藤真裕、塚田拓郎 脚本/岡田麿里 絵コンテ/安藤真裕 演出/安藤真裕、塚田拓郎、酒井原美樹 作画監督/小見山和也、永作友克、井上和俊、石井かおり、大庭小枝、熊膳貴志、藤田正幸、納武史、二宮奈那子

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この最終話はすごく面白かったです。

実は前話(11話)ラストで学校立てこもりの展開になって、なんか先が見えたなって少々がっかりしてたんです。でも、この最終話の冒頭、騒ぎの収拾に来ていた校長先生たちが「また明日くるからね」って帰っちゃうんですよ。意表を突かれました。えっ何、この軽〜い子供扱い(笑)。

高ぶった気持ちを向ける矛先を失った彼女たちでしたが、ミロ先生が提案した「いろ鬼」で思いの丈を発散、深夜の校内で繰り広げられるロックオン大会、未明の空が白白と明ける中、彼女たちは自分の内にある彩りに気づいていく。そして校長先生たちに一泡吹かせる荒ぶりっぷりで締め。この淀みのない流れの美しさというか、予想の斜め上にぐいっと持っていくお話の力強さに大いに魅了されました。

またエンディングも秀逸で、ラストシーンに描かれた絵の具にまみれた彼女たちの姿はアニメ絵ならではの美しさ(実写ではこうはいかない?)、OP曲「乙女どもよ。」と共に映される思わず微笑んでしまうエピローグ、そして和紗のクスッと笑えるセリフで締めくくりと、最後の最後までとても丁寧に仕上げられた傑作回だったと思います。

 

鬼滅の刃
 第19話「ヒノカミ」

監督/外崎春雄 脚本/ufotable 絵コンテ/白井俊行 演出/白井俊行 作画監督/鬼澤佳代、遠藤花織、永森雅人 美術監督/矢中勝

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Bパート中盤からエンディングまでの流れが圧巻です。鬼が自在に操る糸と炭治郎の剣術「ヒノカミ神楽」が縦横無尽に交錯する圧倒的な映像。戦闘描写に挿入される父と息子、母と娘の心象シーンの絶妙な緩急。鬼の首に刃が通った後、挿入歌「竈門炭治郎のうた」と共に映し出される家族の風景を見せられたら、心を動かされないわけがありません。いやー本当に凄かった。

見終わった後、はぁーもうこれで最終回でいいじゃんって思いましたが、次回予告のいつもユルさで我に返りました。そして、予告最後に「十二鬼月に俺は勝ったのか?」でつづく…えっ??あの鬼、まだ生きてるの?(笑)。

 

ゲゲゲの鬼太郎
 第39話「雪女純白恋愛白書」

脚本/井上亜樹子 絵コンテ/古賀豪 演出/古賀豪 作画監督/大西陽一

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鬼太郎6期は、日曜朝の放送にしてはかなり踏み込んだお話もあって面白かったです。その中から雪女のエピソードを選びました。

雪女のゆきは、美人で生真面目、意地っ張りだけどいじらしく、料理下手の属性も持ち合わせた正統派ヒロイン。お話の方も、ゆきと俊の交際を軸にして、猫娘ねずみ男の恋愛指南、なぜか恋敵になってる沼御前、恋愛ゲームに徹夜する鬼太郎など、もはやラブコメ一直線(笑)。

雪女の初恋を悲恋にしないで、妖怪と人間の壁を二人で乗り越えながら交際を続けていくっていう前向きな決意でまとめたのも現代風で好感。なんか雪女らしさが無いみたいな書き方になってしまいましたが、劇伴の方は儚げで風情たっぷり、きちんと正統な雪女路線を踏襲していて、バランスが取れているのもマルでした。

 

『荒野のコトブキ飛行隊』
 第6話「帰らざる無宿」
監督/水島努 脚本/横手美智子 絵コンテ/佐藤誠 作画演出/村上勉 CG演出/佐藤誠 作画監督/佐藤弘明

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キリエが撃ち落されて不時着し、そこから帰還するというお話。ただそれだけなんだけど、彼女の過去話を織りまぜながら、味わい深い雰囲気に仕上がっています。

不時着した場所が「オフコウ山」であることに気づき、幼い頃に出会ったサブジーのことを思い出すキリエ。現在の状況を把握し、戦闘機の残骸から部品を調達し、機体を修理していきます。その時の回想と現実がただ淡々と描写されていく。

そしてある朝、彼女はオフコウ山からの離陸を決行。この作品は全話通して音響が際立っているんですが、このシーンも大好き。室内の音、外の音、近くの音、遠くの音、地面の音、エンジンがうなる音、機体がしなる音など、とにかく音の情報量が多くて臨場感がすごい。

そして隼が地面すれすれに砂塵を巻き上げ、峡谷を越えて大空に飛び立った時、彼女が自由に飛ぶわけがわかった気がするんだなあ。

 

『PSYCHO-PASS3』
 第7話「Don't take God's name in vain」

監督/塩谷直義 脚本/吉上亮、深見真冲方丁 絵コンテ/河野利幸、荒川直樹、塩谷直義 演出/曽根利幸、石井章詠 作画監督/中村深雪、伊藤秀樹、幸田直子、長谷川知世、小谷杏子、竹内知海、市川美帆、篠原健二、中原久文、阿部恒、新野量太、角田桂一、前田法華、中村悟、安慶名結、塚本智也、嵩本樹、下島誠、恩田尚之 

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シリーズ3期のお話は少々難解でした。初見ではわかりにくいことも多く、事件の全容が頭に入っていないまま雰囲気で見ていたところもあったんですが、それでもこの7話は気に入っています。

紛争国への武器輸出、爆弾テロ、終末救済プラン、それらを利用する教団と黒幕のビフロストの存在。その入り組んだ関係を紐解き、追い詰める公安局。そして炯の潜入捜査と舞子の救出劇、灼の爆弾テロ阻止、霜月課長の教団本部への突入が同時進行。さらに外務省行動課の潜入捜査も明らかになるという密度の濃さ。しかもそのどれもがキッチリ見せ場を作ってるのがいいんですよね。

しかし、大きな事件は幕引きを見せるも真相には迫れず。さらに灼の免罪体質が明らかになったりと、もうこれ終わらせる気がないな。そう、勿論わかってましたよ、劇場版に続くってね(笑)。 

 

『女子高生の無駄づかい』
 第6話「まじょ」

監督/さんぺい聖 シナリオ/福田裕子 絵コンテ/橘さおり 演出/石井輝 作画監督/Kim HseSook、Hong ChongYong、南伸一郎、飯飼一幸、池原百合子、吉田潤、中尾高之、佐々木洋也 総作画監督/青野厚司、安田祥子古川英樹

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オカルト好きでコミュ障なマジョが、妹やクラスメートに助けられながら、小さな気づきを積み重ね、勇気を出して一歩を踏み出していくお話…なんて言うとアレですが、しっかりと笑わせてくれて、すごく面白かったです。

印象に残ったのは、ロボが「全ての人に好かれるなんて不可能。わかってくれる人だけ大事にすればいい。」とマジョの顔を真っ直ぐに見つめて語る場面。

マジョにとっては大切な気づきになったようですが、普段ほとんどしゃべらないロボがなぜこんなセリフを口にしたのか。そのわけは後の10話で明かされました。

この作品、キャラの立った女子高生たちのやりとりを笑って楽しむコメディだけど、何か大事なことを押し付けがましくなく、そっと耳打ちして伝えてくるようなところもあって好きなのです。

 

ジョジョの奇妙な冒険-黄金の風-』
 第27話「キング・クリムゾン vs メタリカ

監督/木村泰大、高橋秀弥 シリーズ構成/小林靖子 脚本/堀内全 絵コンテ/吉田泰三 演出/長田伸二 作画監督田中宏紀 総作画監督/石本峻一

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ジョジョ』は流し見しがちなんですが、26話のドッピオの「トゥールルルルっ」があまりのシュールさ全開で魅入ってしまい、この27話にたどり着きました。サブタイも大胆ですが、それに相応しい傑作回だったと思います。

ドッピオとリゾットの死闘は見応えがありました。体内に埋め込まれるハサミやカミソリ、顔から吹き出す無数の針などのエグさ。消耗するドッピオですが、それでも攻撃の絡繰りを見つけ出し、リゾット右足を切断。それを逆手にとりドッピオを追い込むリゾット。最後に投げたメスの行方。まさかのエアロスミス出現による決着!!

すごいな『ジョジョ』。特にこのエピソードを含めた26−28話はお気に入りです。

 

『Dr. STONE』
 第12話「背中合わせの仲間たち」

監督/飯野慎也 シリーズ構成・脚本/木戸雄一郎 絵コンテ/町谷俊輔 演出/大庭秀昭 作画監督/森七奈、岩岡優子、松下純子、次橋有紀 総作画監督/村谷貴志、芝美奈子、宮西多麻子、とみながまり

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ルリの病気を治すため、万能薬サルファ剤を作りたい。だが、そのために必要な硫酸を汲んでくるのは命がけ。それを銀槍の毒ガスセンサーや防毒マスクといった化学の理屈とお互いの背中を預けるタッグの心で乗り越えていった展開はすごく面白かったです。

そして印象的な言葉もありました。千空に対して「これで友達が死んでもオーケー。そんなプランに手を貸す気はさらさら無い。」と言い放つクロム。実はそれと同じような思いを胸に秘めていたコハク。

「怖がりではない人間なんておらんよ。だが何か大切なもののために理屈と心で恐怖に勝とうとしている。」というカセキ爺さんの呟きに心動かされたギンロー。

話は横道に逸れるけど、最近はSNSでこの類の言葉(名言など)が、無駄に消費尽くされて、ありがたみがどんどん薄れちゃってるところもありますよね。そんな中でこういった言葉を輝かせて力強い物語を作っていくのってのは、ホント大変な時代になってる気がします…。

 

ハイスコアガールII』
 第24話「ROUND24」

監督/山川吉樹 シリーズ構成/浦畑達彦 脚本/浦畑達彦 絵コンテ/山川吉樹 演出/山川吉樹 

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ど真ん中に投げ込まれた渾身のストレートのような王道展開。もうこれしか無いって感じの最終回でした。そしてハルオも大野さんも、もう高校生で、この作品は紛れも無いラブストーリーなんだなって思いました。

でもなあ、ハルオを決心させるのに、やっぱり小春ちゃんを登場させるんだなあ。彼女に最後までこの役回りをさせた制作陣はあんまりのような気がします。だから私から、この悲劇のヒロインに最優秀主演女優賞を送ります(小春ちゃんに番外編とか作ってあげてくださーい)。

 

『モブサイコ100II』
 第7話「追い込み〜正体〜」

監督/立川譲 シリーズ構成/瀬古浩司 脚本/立川譲 絵コンテ/立川譲 演出/矢飛田剛 作画監督亀田祥倫

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かつてモブに「いいやつになれ。」と言葉をかけて励ました霊幻。インチキを暴かれ、世間から詐欺師疑惑を追及されて窮地に追い込まれる。その記者会見からの帰り道、仲違いしていたモブが霊幻を待っていた。霊幻は自分の正体についてモブに問う。モブからの返答は「いいやつだ。」…だった。

モブの言葉を聞いて、かつてあの時のモブの気持ちを霊幻は知ったのでしょう。このお話の構成は本当に美しいと思いました。ラストの余韻も素晴らしく、この作品の中でもダントツに好きなエピソードです。

 

今年も本当にいいお話が多かったと思います。
それでは皆様よいお年をお迎えください。

FX