話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選
今年の10選は以下のとおりです。
『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』第8話「ささやかな祈り」
『かげきしょうじょ!!』第5話「選ばれし乙女」
『小林さんちのメイドラゴンS』第6話「合縁奇縁(片方はドラゴンです)」
『白い砂のアクアトープ』第16話「傷だらけの君にエールを」
『SSSS.DYNAZENON』第10話「思い出した記憶って、なに?」
『のんのんびより のんすとっぷ』第5話「ものすごいものを作った」
『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』第12話「PRIDE OF ORANGE」
『BLUE REFLECTION RAY』第21話「まだ何もものに していないよ」
『MARS RED』第3話「夢枕」
『ワンダー・エッグ・プライオリティ』第7話「14才の放課後」
ルール
・2021年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。
<各話のコメント>
『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』
第8話 「ささやかな祈り」
脚本/杉浦理史 絵コンテ/及川啓 演出/佃泰佑 作画監督/中島順、宗圓祐輔、坂本俊太、桐谷真咲、鈴木光
春の天皇賞は、史実にドラマが融合した圧巻の展開。ライスがマックイーンをかわすシーンは何度見ても素晴らしい。レコードタイムの優勝。覚悟のブーイング。傷つきながらも観客に一礼し、立ち去ろうとした姿に送られたウマ娘たちの拍手。そしてブルボンからの祝福とライスの涙。
夢に向かって前に進んでいく人が、逃げ出したくなるような困難に直面した時、寄り添ってくれる人の支えや願いが力と勇気を与えてくれる。いつか、あなたのように誰かを照らせる人になりたい。そんな道半ばのライスシャワーの物語。7話、8話と練られた脚本、演出や挿入歌に至るまでアニメスタッフの総力と熱意と愛が込められた珠玉のエピソードでした。
『かげきしょうじょ!!』
第5話「選ばれし乙女」
脚本/森下直 絵コンテ/森田宏幸 演出/安藤貴史 作画監督/塚本歩、茂木海渡、福井麻記、下地彩加、三橋桜子、日高真由美 総作画監督/高田晃
小野寺先生の必死の励まし。彩ちゃんの吹き抜けるような天使の歌声。ワンシーンでビシッと決める無駄のない構成に、相応しい演技で応えるベテラン・実力派の声優陣が素晴らしい。小野寺先生(cv飛田展男)も山田彩子(cv佐々木李子)も紅華の中ではちょっと地味めな感じだけど、ここぞという見せ場での切れ味は抜群。泣けました。
『小林さんちのメイドラゴンS』
第6話「合縁奇縁(片方はドラゴンです)」
脚本/山田由香 絵コンテ/石原立也 演出/山村卓也 作画監督/池田和美
カンナちゃんと才川さんがお弁当持って川の合流地点まで歩いていくことに。出会ったおじいちゃんから昔のことを聞いて、自分も変わることを想像してみるシーンが印象的です。カンナちゃんと才川さんの頭の中に思い浮ぶことはそれぞれ違う。でもお互いが暮らしやすい社会ってこうして育まれていくのかも。将来はもっと楽しみって締め括るのがいいなあ。
『白い砂のアクアトープ』
第16話「傷だらけの君にエールを」
脚本/柿原優子 画コンテ/室井ふみえ 演出/熨斗谷充孝 作画監督/宮崎司、中山みゆき、大東百合恵、杉光登、タカハシアキラ
知夢がシングルマザーだったということに驚かされたし、散りばめられてる子育てあるあるがとてもリアルで一気にお話に引き込まれました。そして何よりも、知夢が憧れだった仕事を一度クビになっていたこと、それでも諦めずに再チャレンジして今の仕事を手にしたことを知って、こんなん応援してしまうやろってなってました(笑)。
だから、飼育部長のウッカリが発端とはいえ、知夢の事情や仕事への思いについて、周囲が理解し、彼女の助けになるよう行動し、自然に受け入れてくれたことがすごく嬉しかった。いやーまさにサブタイどおりのお話。
ちなみにこのサブタイ、Twitterでどなたが呟いておられたんですけど、AパートとBパートの間に出るサブタイの二つの赤い丸はりんごで、知夢と薫を表してるそうです。なるほど、センスを感じさせる演出だなあ。
『SSSS.DYNAZENON』
第10話「思い出した記憶って、なに?」
脚本/長谷川圭一 絵コンテ/五十嵐海 演出/佐竹秀幸 作画監督/五十嵐海 メカ作画監督/五十嵐海 総作画監督/坂本勝
突如現れた怪獣が影だけを残して人間を取り込んでいく。取り込まれた人間は過去を追体験し、その記憶に囚われてしまう。そんな非日常世界を表現する映像と音響がとってもエモーショナルでゾクゾクさせられます。特に水門の上で香乃と夢芽が語り合うシーンは好きだなあ。あのピアノの音色を加えたのは天才的すぎる!って思うのです。
『のんのんびより のんすとっぷ』
第5話「ものすごいものを作った」
脚本/山田由香 絵コンテ/二瓶勇一 演出/ソエジマヤスフミ 作画監督/松本弘、平田かほる、松下純子、楠田悟 総作画監督/古川英樹
「こまぐるみ」だらけのほたるんの部屋(なんか増えてない?)。ものすごいものが今まさに誕生しようとしていることに驚愕と興奮を覚え、打ち震えるほたるんの表情。もうアバンだけで十分面白いです。
そして、夏休みの自由研究「メカこまぐるみ」の爆誕。これが家の外に出たことで、ほたるんは追い詰められることに。こまちゃんの鋭い洞察に万事休すと思いきや、やっぱりいつものこまちゃんだったという。いやー最高でした。
『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』
第12話「PRIDE OF ORANGE」
監督・絵コンテ/安齋剛文 シリーズ構成・脚本/待田堂子 演出/西野武志 作画監督/周昊、藤川良子、河野絵美、三島千枝、本田翼、青木真理子 総作画監督/田中紀衣、大沢美奈
白熱の真っ向勝負。よくある怪我やチートな必殺技の応酬なんて必要なし。作戦がうまくいく。作戦が見破られる。イライラと焦り。2分間の退場のチャンスとピンチ。ラスト1秒、リバウンドを押し込んでの決勝点。とにかく純粋にアイスホッケーの試合が面白い。
そして何よりも作り手がアイスホッケーとそれに関わる人たちをリスペクトしていることが感じられ、それが作品の魅力に繋がっているのがすごくいい。選手だけでなく、監督、スタッフ、応援団、選手の家族、メディア、みんなキャラ立ってたもんなあ。
試合後のビクトリーダンスは曲もカッコいいし、作画も頑張ってました。長いエンドロールは劇場版の趣き。オリジナルアニメとして、最終話をきっちりと締めたのも好感でした。
『BLUE REFLECTION RAY』
第21話「まだ何もものに していないよ」
脚本/和場明子 絵コンテ/羽多野浩平、石山タカ明 演出/石山タカ明 作画監督/栗原裕明、笠野充志、青木里枝、沓澤洋子、Dogwood、Big Owl、スタジオエバーグリーン、24FPS、K-PRODUCTION、セブンシーズ 総作画監督/村上雄、坂本哲也、菊田幸一
最終話で陽桜莉が紫乃の手を掴み、紫乃が願いを託すまでの重厚なストーリーがあったからこそ輝きを増す至福の日常回。ちょっとしたやり取りとか仕草で登場人物たちの機微を表現するのがメッチャ上手い。見ててホント楽しい。
出てくる料理も、青椒肉絲、筑前煮、ぬか漬けなど妙なこだわりを感じます。ぬか床に「ぬかさん」なんてあだ名をつけるアニメ、他に聞いたことないよね(笑)。
『MARS RED』
第3話「夢枕」
シリーズ構成・脚本/藤崎淳一 絵コンテ/羽多野浩平 演出/貞光紳也、羽多野浩平 作画監督/矢島陽介、岡郁美、荒木裕
「あなた…あの世から会いに来てくださったの?」今の気持ちを貞心と良寛の和歌にのせて伝え合う二人。山寺宏一さん(山上役)と大原さやかさん(冨子役)の演技が素晴らしくて、教養ある大人の逢瀬の情感たっぷりです。
すごいなあと思ったのは、山上が一人になってしまった冨子を案じて再婚してもいいんだぞと言った時。冨子は貞心の歌と共にこう答えます。「いつまでも、私はあなたの冨子です…」しおらしくも実に情熱的。いやーこういう台詞、一度でいいから言われてみたいものです(笑)。
『ワンダー・エッグ・プライオリティ』
第7話「14才の放課後」
脚本/野島伸司 絵コンテ・演出/小林麻衣子 作画監督/鄧佳湄
最後のシーンでリカがママに突きつけた執行猶予。裏を返せば、リカ自身の猶予期間でもあります。リカなりに精一杯ママに寄り添って、一緒に頑張りたい気持ちを伝えたのかなあ。何とも遠回しな伝え方だけど、ママはちゃんと受け取ったような気がします。そんな妄想が膨らんで、味わい深い余韻が残るラスト、すごく印象的でした。
今年も本当にいいお話が多かったと思います。
それでは皆様よいお年をお迎えください。