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深夜アニメ、音楽、映画、コミックの感想など

話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

今年の10選は以下のとおりです。

『アキバ冥途戦争』第8話「鮮血に染まる白球 栄光は君に輝キュン」
機動戦士ガンダム 水星の魔女』第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」
『邪神ちゃんドロップキックX』第2話「錠剤はすべてラムネです」
SPY×FAMILY』第2話「妻役を確保せよ」
ダンス・ダンス・ダンスール』第5話「死ね、ねーだろっ」
チェンソーマン』第8話「銃声」
『ヒーラー・ガール』第5話「空は青く山は緑、川の戦い銀河ステーション」
『ぼっち・ざ・ろっく!』第9話「江ノ島エスカー」
リコリス・リコイル』第3話「More haste, less speed」
『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第6話「夢色コントレイル」

ルール
・2022年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。

 

<各話のコメント>

『アキバ冥途戦争』
 第8話 「鮮血に染まる白球 栄光は君に輝キュン」

脚本/日高勝郎 絵コンテ/坂田純一 演出/佐々木勅嘉 作画監督/矢野康平、鍋田香代子、野田友美、Lee Min Bae、Shin Min hyeon

 

映画、アニメ、漫画、プロ野球高校野球、草野球のパロディやあるあるを一挙手一投足すべてに盛り込んだ、アニメスタッフ乗り乗りの野球回。鮮やかなダブルプレーやピッチャーがプレート前の地面を足で平す何気ない所作とか、野球の魅せ方にも並々ならぬ意気込みが感じられて素晴らしいです。

でも、試合の方は最初からど突き合いの応酬なんだよね。それがフェアプレーに徹するなごみに感化されていったんだけど、刃物で刺されて息絶えた宇垣とみやびを目の前にして「死んでないっ」って試合を続行したり、その宇垣をベンチに座らせてるのスッゲー狂気だし、不謹慎ながら爆笑でした。

そしてこの「死んでないっ」って台詞、ナイスゲームを乱入者の暴力で台無しにされたくないという思いが、野球の試合に「メイドの未来」を託したなごみの思いへと繋がって、なごみに向けられた言葉になってるのがすごくいい。渾身の野球描写とシュールな面白さが同居した稀有な野球回だったと思います。

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女
 第7話「シャル・ウィ・ガンダム

脚本/米山昴 絵コンテ/大倉雅彦 演出/吉沢俊一 作画監督/菱沼義仁、戸部敦夫、中島里恵、尾崎正幸、丸山修二、斉藤和也、宍戸久美子、秋津達哉 メカニック作画監督/片山学

 

これまで「ガンダムシリーズ」には興味をひかれなかったんだけど、今回の『水星の魔女』は、キービジュアルがカッコよかったので見てみたら、メッチャ面白い。なんだか学園を舞台にした青春群像劇の趣だし、百合ゆりしてるミオリネとスレッタのふたりを見ているだけで、最高に楽しい。

このお話では、今まで斜に構えていたミオリネが真正面から大人と向き合い、スレッタとエアリアルを守ろうと頑張るんだけど、素直に感動しました。彼女の決断が、誰かの思惑にハマるものだったとしても、手にしたモノの先に厳しい苦難が待ち受けていたとしても、こうした若者たちが風向きを変えていくんだよなあ。彼女らしい大人の作法がとても印象的でした。

そしてサブタイトルも洒落てますよね。まさかビジネスのお話になるなんて想像もしてなかったから、見終わってなるほどって思いました。

 

『邪神ちゃんドロップキックX
 第2「錠剤はすべてラムネです

脚本/村上桃子 絵コンテ/永居慎平 演出/大久保亮 作画監督/KIm suho、杉山直輝

 

情緒不安定すぎるぴの。おくすり風ラムネのむちゃ食いとか、ゲーム風の回復ツールを太ももに打ち込むとか、鳥兜?でリエール様を毒殺未遂とか、可愛いけれど相当ヤバい。そんな密室芸人ネタの隠喩で笑わせるセンスが冴えてたし、死を恐れているのに死んでやるとか言う面倒くさい娘認定で納めるオチもよかったです。

 

SPY×FAMILY』
 第2話「妻役を確保せよ」

脚本/山崎莉乃 画コンテ/古橋一浩 演出/原田孝宏 作画監督/嶋田和晃、三浦龍 総作画監督/嶋田和晃

 

スパイ、殺し屋、超能力者が疑似家族を作るというアイデア、素晴らしい映像、力の入った劇伴、視聴者にストレスを与えないお話の進め方、心情も状況を全部喋っちゃうんだけど、うるさく感じないナレーション、もうそのまんまオーディオドラマにしてもいけちゃうんじゃないかしら(笑)。

疑似家族がホンモノの家族になり、最後に切ない別れの物語になるのかと想像していたら、どうやら当面そういうのはなさそう。でもどのエピソードも文句なく面白かったと思います。その中でも、この2話はお気に入り。ヨルさんとはやみんの魅力全開、婚約指輪?をはめるラストシーンは最高に良かった。

 

ダンス・ダンス・ダンスール
 第5話「死ね、ねーだろっ」

脚本/森江美咲 絵コンテ/大谷肇 演出/大谷肇 作画監督/杉野信子、迫江沙羅、川元まりこ、後藤有宏、日向正樹、鈴木春香 バレエ作画監督桑原剛、小笠原篤 総作画監督/長谷川ひとみ、石川佳代子、黒岩裕美、小美野雅彦

 

後半のクライマックス、潤平が引き金を引いて始まったアドリブ劇。舞台音楽と圧倒的な映像に煽られて、憎悪の塊ロットバルトに魅入ってしまいました。幕が下りると少し静まり返った後、観客が一斉に歓声を上げてアンコールを求めるんですが、視聴者の私も同じ気持ちになったのは初めてかも。すごかったなあ。

 

 チェンソーマン』
 第8話「銃声」

脚本/瀬古浩司 絵コンテ/御所園翔太 演出/御所園翔太、佐藤威 作画監督/新沼拓也、野田友美、伊藤公崇、中山智代 総作画監督/山崎爽太、杉山和隆、駿

 

生活感のないミニマリスト、シンプルな家具や小物、朝食にサンドイッチと水、料理とかしなさそう、でも冷蔵庫の中に作り置きのタッパーあったような。観葉植物がたくさん、テーブルにお花を飾ってる、可愛らしい。デリカシーのないデンジに友達でいこうとか…ね。いなくなって、悲しいね…。

お話が大きく動きだしたし、アキくんとサムライソードとのバトルも見応えあったし、幽霊の悪魔のビジュアルも美しかったし…なんだけど、最後は姫野先輩の四肢がひとつ、またひとつと消滅していく姿を呆然と見ていた記憶があります。姫野先輩がここで退場するなんて思ってもいなかったので衝撃でした。

 

『ヒーラー・ガール』
 第5話「空は青く山は緑、川の戦い銀河ステーション」

監督・絵コンテ/入江泰浩 シリーズ構成・脚本/原田暢 演出/入江泰浩 作画監督/宮原拓也 メカ作画監督/石口十、松田未来

 

ノスタルジア疑似体験。映像演出の良さに加えて、いつもは音声治療として用いられる歌が、この5話ではミュージカル風の挿入歌として歌われたのも自然な感じでよかったなあ。お話はサブタイどおり牧歌的、弟くんの淡い恋心の味付けもされてて面白い。しかし深夜アニメって、ホント「銀河鉄道の夜」好きだよね^^

 

ぼっち・ざ・ろっく!
 第9話「江ノ島エスカー」

シリーズ構成・脚本/吉田恵里香 絵コンテ /平峯義大 演出/平峯義大 作画監督/伊藤弘樹

 

8話がすごく良かったんだけど、この9話の雰囲気も好きだったのでこっちを選びました。リョウはともかく、虹夏ちゃんがやっぱりインドア人で展望台の景色もそこそこに帰りたがるところなんかちょっと面白いし、藤沢までの小田急車内でぼっちと喜多ちゃんの心が通い合う感じがとてもいいんだなあ。

 

リコリス・リコイル
 第3話「More haste, less speed」

脚本/枦山大 絵コンテ/足立慎吾、丸山裕介 演出/丸山裕介 作画監督水谷雄一郎、滝口弘喜、小沢久美子、山村俊了、しまだひであき、TOMATO アクション作画監督岩澤亨、柴田海 総作画監督/鈴木豪、晶貴孝二

 

この作品、1話2話でのガンアクションや錦木千束(cv安済知佳)のキャラに引き込まれ、3話で登場人物たちの感情や奥行きが見えたことで期待値MAXって感じになりました。もちろん、その後も面白かったんですが、最終話まで見て振り返ると新鮮味的にもこの3話がピークだったと思えます。

登場するキャラが生き生きとしていてホントに素晴らしいんだなあ。噴水での千束とたきな、模擬戦前の罵り合い、司令の千束評、帰りの電車のシーン…。特に千束の「スカッとしたなあ」に「えぇ」と返したたきな(cv若山詩音)が印象的。絶妙なニュアンスが滲み出る決めの一言だったと思います。

 

『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』
 第6話「夢色コントレイル

脚本・絵コンテ/春藤佳奈 演出/松村幸治 作画監督/清水勝祐、和田賢人、関口渚、浅井昭人、鮫島寿志、綾部美穂

 

前半パートでは、誰にも打ち明けられない葛藤に苦しむマリア、怒ってばかりのマリアにモヤモヤを募らせるマナ。後半パートでは、対照的な二人が一緒に描く美しいコントレイルと情緒極まるやり取り。最初から最後までエモーショナルなカット満載、機微をうがつキャラの表情にもゾクゾクさせられました。

 

今年も本当にいいお話が多かったと思います。
それでは皆様よいお年をお迎えください。

FX