BGMもない、ただ波音がする中での二人の会話。ラストは波音さえ消えて、龍の胸に顔を埋めた千鶴のむせび泣きだけが聞こえて・・・、静かに雪は舞い降りてくる。
私は思います。千鶴の徹への想いは恋であったのだと。そして彼女は一生懸命だったんだと。でもそれは叶わぬ恋で、それを知っていたのは徹。彼は千鶴が大好きで傷つけたくないという思いから、自然にそれを夢や憧れにすり替えていったのかもしれません。
いつしか千鶴は徹への想いが、恋なのか憧れなのか自分でもわからなくなっていった。だから徹が結婚することになっても終われなかった。徹への想いや一生懸命やってきたことへのけじめがつかなかったのだと。
でも龍は知っていたんだと思います。千鶴の徹への想いは、恋でなければ終わらないのだと。龍の一言に千鶴の目から涙があふれ出します。それは、徹への想いが切ない一所懸命な恋であったと思わせてくれた龍の優しさを感じたからであり、それ故に流すことができた本当の失恋の涙だったのでしょう。
すばらしいエピソードだったと思います。