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へうげもの 34−39話 感想

利休の最期もやはり茶席でしたね。彼の切腹には、彼自身も含めて様々な思惑が交錯していたと思います。それぞれ登場人物が何を思い、どう決断したのか。さすがに39話も積み重ねてきただけに一言では語れない重厚さを感じました。

「頼む。師を冥途に送りし者どうし、唯一の友でおってくれ。」

秀吉は何としても古織に介錯を引き受けさせる必要がありました。最初は理詰めで迫ったものの、古織に断られます。さらにアメとムチをちらつかせ、最後に絞り出したこの言葉は果たして純粋なものであったのか。私はそう信じたい気持ちです。でも古織に決断させるためにこの言葉を使ってしまう限り、やはり秀吉は孤独であり続けるでしょうね。

「さあ、秀吉が犬よ。役目を果たして、餌にありつけ。」

利休は、介錯人として古織がやって来るとは思っていなかったようです。散々に悪態をついた上で、床の間の端に座ってこの言葉を言い放ちます。ずいぶんひどい言葉です。でもこの後に「座り位置が悪い。」「さぁら壁ぇ〜。」とやってみせるのですよね。さんざん気張ったあげくの締まりのなさが、古織を笑わせます。

もちろんこれはわざとなんですが、いつから利休はこうする気持ちになったんでしょう。「己が何者かわからない未熟者」と「それがあなたなのです。」は対になっているようですから、古織と二人きりになってから即興は始まっていたのかもしれません。それは利休の思い描いたとおりなのか、それとも偶然の成り行きであったのか・・・。

「申し開きはいたしませぬ。」

古織は正直ですから、この言葉は本心です。でも彼が介錯を引き受けたのは、茶道筆頭の地位が欲しかっただけではないはずです。秀吉への思い、自分自身、家族、同士、そして何よりも利休への思いがあった。だからこそ古織は数寄の継承を決断したのでしょう。そしてそれは、判断を誤れば世の中を左右する大きな決断でもあったと思います。

実は、利休はこの言葉を聞いて、安心したんじゃないでしょうか。古織は茶道筆頭になることを認めたわけですから。さらにその決断がどういうことを意味するかは、利休自身が一番わかっています。だからこそ、あの即興を打って出たんじゃないかと思えます。「それがあなたなのです。お忘れなきよう。」というのは古織への利休からのエールですよね。もう泣けます。まさに一期一会。見事な末期の茶席でありました。

ラストは、荘厳な音楽とともに、秀吉、三成、古織の姿が映しだされました。利休の時代を終わらせたこの者たちが、この後どのような時代を創り上げていくのでしょうか。原作には続きがあると聞いています。もし続編が作られたなら、是非とも見たいですね。

へうげもの」本当に面白かったです。

FX